虚空のマイケル

クラウン・マッターホルンの神造山脈と虚空のマイケル

4-53:あわあわの世界へ

***  カチ、コチ、カチ、コチ  カチ、コチ、カチ、コチ  茶色いマイケルははじめ、また星の外に連れて来られたのかと思ったよ。  瞬きをしたら闇の中にいたんだ。  しばらくすると暗闇に目がなれてきて、いくつかの扉がぼんやりと浮かんでいるの...
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4-52:回転儀

***  驚愕をよそに、子ネコたちの身体は空へと向けて加速した。  当たり前のようだけど、速さっていうのは身体が感じているものらしい。  びゅんびゅん吹く風を肌で受けたり、間近に通り過ぎる建物を見たりするからこそ、速いって感じるんだ。周りに...
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4-51:極光

***  突然の夜。日蝕だろうかと空を見上げると星が出ていた。  舐めたら甘い味のしそうな星の海。  隣を見れば風ネコさまが、茶色いマイケルの耳に手を伸ばしたまま、氷像みたいにかちんこちんに固まっていた。風ネコさまだけじゃない。3匹のマイケ...
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4-50:疲れる景色

***  山脈が再び震え出した。  今度は震えるにとどまらず、大地の神さまの後を追うように、ぼろぼろと崩れていく。頂上を残して壁面が崩れ、周りの山々も大きくひびの入った箇所からガコッと割れて、斜面をなだれ落ちていった。  物凄い音がしていた...
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4-49:宣言、そして崩壊

『よーし来るか、来るよな? 来い、来い、出てこい』  どこからともなく聞こえてくる風ネコさまの声は、無邪気というよりは真剣で、ずっとずっと待ちわびたものがついに目の前に現れる、という高揚感でいっぱいだ。  反対に、一拍遅れて叫んだ灼熱のマイ...
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4-48:ネコ鉄砲の引き金

穏やかな色で塗りかえられていく空。  薄いカーテンをサーッと閉めるように、そこにあったものすべてが押し流されてしまった。  黒雲、雷、大渦、炎、礫、隕石……。それらが寄せられ、詰められ、転がり、ひしゃげ、潰れて、霧散しながら、大空の端へ端へ...
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4-47:雷雲の海

***  球雷は、さっきよりもかなり速く膨らんだ。あんまり速いからすぐにクラウン・マッターホルンの頂上が飲み込まれるかと思ったんだけど、  あれって……!  つむじ風が立ったんだ。それも崖の上で見たものよりずっと大きくてはっきりした、ほとん...
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4-46:ネコ裁判

***  擦れた呼吸音だけがやけに大きく聞こえる空の上。  茶色いマイケルは視線の先に、『風の獣』に乗った2匹のマイケルを見つけた。  虚空のマイケルは、肩で息をしている果実のマイケルの元へと滑るように近寄り、ケガが無いかどうかを確認してい...
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4-45:雷樹と黒ネコと

***  大きな音はしなかった。  ただし、変化が無かったわけじゃない。  茶色いマイケルたちの正面、青空にひびが入っていたんだ。ピシリ、ピシリと繊細な音をたてながら、光の亀裂が上へ横へと広がっていく。 「雷樹……」  虚空のマイケルが『風...
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4-44:お礼

***  『神世界鏡の欠片』は『尖った岩』に打ち当たるなり細かく砕けた。  シャン、と軽く涼やかな音をたてて、風に撒いた砂のように粉々になってしまった。その粉が爆風に乗って雷雲ネコさまの中へと吸い込まれていく。  風の勢いはすごかったし、ほ...