4匹のマイケル

あわあわの世界

(108)9-1:ケーブ・ライオ―ネルへ

***  銀色の森が、子ネコたちの左右をサーッと後ろに流れていく。  茶色いマイケルは、柔らかい葉を押しつける音をいくつも聴いていた。その奥には少しだけ、硬い土の音が混じっている。たたっ、たたっ、と重さをまるで感じさせない足取りだ。  子ネ...
あわあわの世界

(107)8-25:失われてしまうのは

***  世界を救う意味はあるのか……?  そんな当たり前のこと、と茶色いマイケルは質問をしたケマールさんを見て首を傾げた。  住む家がなくなると困る。自分の部屋や秘密基地がなくなるのもイヤだ。街がなくなるとシロップ祭りや雪と氷の祭典に行け...
あわあわの世界

(105)8-23:神のシステム化

*** 『今を変えたいのだろう? ならば頭を止めている時間はないぞ』  オセロットは息継ぎをしなかった。 『神の意識を変える方法は2通りある。1つは、特別賞をとり神々を星のシステムにしてしまうことだ』 「さきほど言っていたことか」  灼熱の...
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(104)8-22:罪過の分銅

***  ずっと気になってはいたんだ。ティベール・インゴットを秤に乗せることにどんな意味があるんだろうって。  時の女神さまは、『世界の行く末を握る鍵』だと言っていた。  オセロットは、『秤に乗せるだけでは世界は救われない』とも言っている。...
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(93)8ー11:大昔の猫

***  目を丸くした灼熱のマイケル。その隣りにはアゴに手を当てる虚空のマイケルの姿もあった。  大昔のネコの姿。これが。  茶色いマイケルはももの上にいる雪雲ネコさまの頭から背中にかけてをゆっくりと、しっかりと撫でていった。小さな頭。柔ら...
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(103)8-21:あわあわの大渦

*** 「余波、って?」 「時の女神さまが言ってたことぉ、覚えてるぅ? ほら、神さま同士で影響を、って話」  果実のマイケルの言葉で茶色いマイケルがピンとくる。  ――大地が火を噴けば空に塵(ちり)がひろがり、風に乗って海へと降りそそぐ。そ...
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(102)8-20:罪と後悔のサイクル

***  息を荒くし、足を震わせ、ついには頭から足元に崩折れたオセロット。話を進め、深いところに切り込めば切り込むほど弱っていく。雪崩ネコさまたちも話を止めさせようとしていた。なのに、 『あわあわの神によって下された罰はもうひとつある』  ...
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(101)8-19:雷雲の罪 後編 削られた神格

***  誰かの身じろぎだろうか、ギリリという木のきしむ音が、湿った空気をかすかに震わせた。光はうすれ、ネコたちを暗い影が少しだけ遠くに連れていく。  話は一応の大団円を迎えた。雪雲ネコさまたちが失われることはなかったんだから、良い結末だっ...
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(100)8-18:雷雲の罪 中編 風ネコさまのトコトコ施設見学

***  それは風ネコさまが暇にまかせて世界を飛び回っている日のことだった。 『たまたま通りかかった火山から炎の神が噴き出してきてよー、地核のジジーが呼んでるっつーから面倒くせーけど行くことにしたんだぞー』  暇すぎて忙しかったのに、と。 ...
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(99)8-17:雷雲の罪 前編 二大派閥と、暗い部屋のライオン

***  オセロットは今にも倒れそうな身体を支えられながら背筋を伸ばし、震える前足を地面に突き立てた。銀色の土が足先を埋めている。 『巻き添えをくわせてしまっているのだ』  両脇から支える雪雲ネコさまと雪崩ネコさまは、その言葉の意味と覚悟を...