4匹のマイケル

クラウン・マッターホルンの神造山脈と虚空のマイケル

4-40:ピューっと、舞う

*** 『おいネコー、このまま家まで送って欲しいかー?』  クラウン・マッターホルンの頂上の、そのまたさらに100メートルくらい上空で、不安定な風に浮かべられた茶色いマイケルは神さまの声を聞いていた。一見穏やかなその声は他のマイケルたちにも...
クラウン・マッターホルンの神造山脈と虚空のマイケル

4-39:丸焦げネコ

***  雷の柱が消えて、あとに残った4匹のマイケルたち。  子ネコたちが持ち上げているものを見て雷雲ネコさまは、立派なたてがみから赤い雷を四方八方にまき散らした。 『神の宝をネコどもがっ!』  そう、マイケルたちは神さまの宝でありこの登頂...
クラウン・マッターホルンの神造山脈と虚空のマイケル

4-38:ちょっかい

***  波打つ黒雲にむけて次から次へと突き刺さる、赤い雷。  放たれるたびに普通の稲妻とは違う、鋭い音をさせている。  4匹はそれを強張った表情で眺めているしかなかった。 『まだ頭が追いつかないか?』  首筋に舌を這わすような声だ。子ネコ...
クラウン・マッターホルンの神造山脈と虚空のマイケル

4-37:雷音

*** 『なぜ、ここにいるのだと聞いている』  空気が帯電しているらしく、子ネコの柔毛がわっと逆立った。周りを見れば、小さな光の筋がパリパリッと何もないところを走っている。  子ネコたちからの声はない。威圧感と切迫した状況に、身体が強張って...
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4-36:最後の欠片

***  4匹は尖った岩の周りで、風を浴びていた。  風と言っても微風も微風、ヒゲが無ければ吹いているのか分からないくらい。それでも茶色いマイケルたちは気持ちよさそうに目を細めていたよ。  ただ、そう長いこと浸ってはいなかった。険しい場所を...
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4-35:カーテン登りの果てに

***  子ネコの頃、よくカーテン登りをした。  幅広のカーテンに飛びつき、爪をひっかけてへばりつく遊びだよ。  どうしてカーテンにへばりつきたくなったのかは覚えていないな。下から見上げた波打つ布が「どこまで登れるかな」って言っていたのかも...
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4-34:ネコニシカタベラレナイタケ

*** 「クラウン・マッターホルンは古くから霊峰と崇められていて、事情を知らない若い空ネコたちでさえ神を身近に感じることがあったようだ。特に山頂付近では身に覚えのない声を聞いたと語る冒険家ネコたちも多い。不思議なことではあっても信じない理由...
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4-33:白

***  まどろみの中、それが何なのか分かるには、しばらくかかった。  白い。  冷たい。澄んでいる。  寒い。痛い。くすぐったい。  懐かしい心地だ。だんだんと感覚が追いついてきて、奥に仕舞っていた記憶と重なって出てくる。今どういう状態な...
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4-32:残り時間

***  びゅうびゅうと吹き上げる谷風が、追いつこうとする子ネコを邪魔してくる。声はかき消されてしまい、風音で耳が切り裂かれそうだ。  茶色いマイケルは、5万メートルからの降下にも無かった怖さを感じていた。  意識不明の状態で落ちていく仲間...
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4-31:第6ポイント 岩壁

***  第6ポイント。  雄大と仰いだ稜線は見当たらず、目に映るのは岩壁ばかり。その岩壁にしてもほぼ垂直で、道と呼べるものもすでに無くなっていた。荒く割った氷のような崖を、ひたすら上るばかりなんだ。  氷という例えは、見た目ばかりじゃない...