あわあわの幕間

あわあわの世界

(29)あわあわの幕間2:大戦の残火 殺猫鬼ムル⑤ 殺猫鬼として

***  家畜を食肉にするまでにはいくつかの工程がある。  至極大雑把に分けると、 気絶させる血を抜く皮を剥ぐ中身を出すバラバラにしてさらに小さくする  の5段階。もちろん肉や”中身”には色々な部位があるし、洗浄も複数回行わなければならない...
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(28)あわあわの幕間2:大戦の残火 殺猫鬼ムル④ 笑った鬼ネコ面

***  ムルは屠殺場で働き始めた。  食品プラントラインの再稼働によって増産された家畜。それを解体するネコの手が足りていないのだという。  そういう状況にしては安い給料だったが、元々浪費するという感覚を持っていないムルにしてみれば、給料な...
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(27)あわあわの幕間2:大戦の残火 殺猫鬼ムル③ その日を境に

***  ウーラ孤児猫院に『一斉消毒』の依頼が届いたのは秋口のことだった。  ムルたち『ピサト』の活躍もあり反撃の勢いを増していた軍部は、冬になる前に敵国の重要拠点を壊滅させるという決定を下した。その知らせを誰よりも喜んだのは他ならぬウーラ...
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(26)あわあわの幕間2:大戦の残火 殺猫鬼ムル② ピサト

***  『ピサト』に与えられる仕事には、『個別消毒』と『一斉消毒』とがある。  個別消毒とは、軍部にとって邪魔な『ばい菌』を1匹ずつ消し去ることで、これはピサト数名を集めたチーム単位で行う。  一方、一斉消毒というのは、『ムル』たちの待ち...
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(25)あわあわの幕間2:大戦の残火 殺猫鬼ムル① 孤児猫院

***  その赤子ネコは、路上の端で『猫買い』に買いとられた。  ちゃりん、と掌に落とされた小銭の軽さに母ネコは顔をしかめたけれど、 「今の時代、アンタみてぇな親ネコがわんさかいるんだ。後ろを見てみなよ。薄情が列を作って並んでやがる。バカみ...
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(14)あわあわの幕間1:ある美しい山に生まれた馬

***  言葉を持たない動物の思考。  それは、鮮やかな夢を見せられているようなものだ。  行動するために必要な判断はすべて、”感覚”というシンプルな、ひと塊のパッケージとしてまとめて受け継がれており、だから風に吹かれて走り出すときも、目に...