あわあわの幕間

あわあわの世界

(69)あわあわの幕間:リーアの弱さ③ 足りない何か

◆◆◆  理想の私を雲に描いていく。  もくもくと広がる白いカンバスに漠然と。  たどたどしい筆致ではあったけれど、そこには確かに未来の私がいて、彼女は、満面に自信を湛えてこう言っていた。  ――ここまで来られるかしら?  仕草のひとつひと...
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(68)あわあわの幕間:リーアの弱さ② あの雲に理想のあなたを

◆◆◆  心を震わせたのは冒険譚。  強大な竜の支配する世界。誰もが諦めた目をしている中でただ1匹、それを否として立ち上がる主猫公。  投げ出したくなるほどの困難に刃を構え、力強い言葉で味方のネコたちを鼓舞し、ただ1匹となっても諦めず壁を乗...
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(58)あわあわの幕間5:サビネコ兄弟とピサトの残り火⑥ いつか、また一緒に

***  逃げ込んだ獲物を捕るために、暗い隙間に手を突き入れて滅茶苦茶にまさぐる。ネコがよくする動きだ。  垣根の向こうからなだれ込んできた“鎧”『ネコソルジャー・デス』の大群は、窓を突いて家の中をかき混ぜた。  争いの廃棄物が殺到する。 ...
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(57)あわあわの幕間5:サビネコ兄弟とピサトの残り火⑤ 命ぜんぶかけて

***  家の中にいたのは26匹。ほとんど口もきけない幼ネコばかりだ。  聞けばこの子ネコたちの暮らしていた施設に、他の施設から一報があったという。  途端、成ネコたちは慌てだし、これから応援に行かなければならないからと、幼ネコたちの中で一...
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(56)あわあわの幕間5:サビネコ兄弟とピサトの残り火④ 『一斉浄化作戦』当日

***  『メトロ・ガルダボルド』の夜に戒厳令が敷かれるのはそう珍しい事ではなかった。街ネコたちの対応も手慣れたもので、文句を言うものはなく、理由をとやかく聞いて来るようなネコもいない。  ただ、今回の作戦はすべての『残り火』たちを”捕獲”...
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(49)あわあわの幕間5:サビネコ兄弟とピサトの残り火③ 提案

*** 「隊長。資料の用意が出来ましたので説明致します」  『治安維持ネコ部隊』の執務室。  補佐役として任命された初老の黒ネコが、携帯端末を取り出し、プロジェクタと有線接続する。壁一面を使った大仰なスクリーンに映し出されたのは、 「『食猫...
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(48)あわあわの幕間5:サビネコ兄弟とピサトの残り火② 火葬場

***  フレイルが『ピサトの残り火』に襲われたのは、ハチミツとコハクが久しぶりに帰ってきた晩のことだった。  日も暮れる間際、『治安維持ネコ部隊』の教育課程を終えて帰ってきた2匹をねぎらうために、自分では飲まないマタタビ酒を買いに行ったフ...
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(47)あわあわの幕間5:サビネコ兄弟とピサトの残り火① 踊り

***  ハチミツとコハク。2匹のサビネコ兄弟がまだよちよち歩きの子ネコだった頃から、祖父ネコのフレイルはことある毎にこんな話をしていた。 「ネコってやつはなぁ、生まれてすぐに”常識”っていう心の種を植えられるんだ。俺の中にもあるし、お前た...
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(44)あわあわの幕間4:外交官ネコ マルティン① エリートネコ街道

*** リーベ・レガリアにマルティンあり。 眉目秀麗、毛並みはしなやか、通りすがりにウインクでもしようものなら照れ隠しに視線をそらされる。そんな美男紳士ネコのサバトラ模様が今日もこの街を闊歩する。 という夢想にとっぷりと浸りながら、マルティ...
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(37)あわあわの幕間3:輝く白毛の民 ケマール① 幸い

***  帝国が大々的に『輝く白毛の民』を自国のモノであると喧伝し始めたのは、ケマールの齢が10を数える前のことであった。  ほどなくしてケマールは捕らえられ、飼い主の元で教育(シツケ)を施される。  教育とは、それまでに培ってきた価値観を...