スノウ・ハットの銀世界と茶色いマイケル⑭

スノウ・ハットの銀世界と茶色のマイケル スノウ・ハットの銀世界と茶色いマイケル

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「おーい、子ネコたちー! 聞こえてるかーい?」

 茶色いマイケルは両手を口に添えて、大声で呼びかけた。

「ボクたち今からシロップ祭りをするんだ! みんなもおいでよー!」

「「「おいでよー!」」」

 チルたちを含めた全子ネコがあとを追う。

「シロップならここにいっぱいあるからさ!」

「「「シロップあるよー!」」」

「みんなでおいしい雪を食べつくそー!」

「「「食べちゃお食べちゃおー!」」」

 澄んだ空気にテンポよく、歌うようなリズムで声が伸びていく。よく見ればあちこちの窓に子ネコの影が見えた。

 ようし、あと一息だ。

 大きく息を吸い込んだそのとき、

「ボクのシロップもたくさん食べていいぞー!」

 ひときわ大きな声で太っちょ子ネコが叫んだ。

「ボクは猫一倍食いしん坊だからー、シロップも猫一倍……ううん、猫五倍はあるんだー!! みんなで食べても食べきれないくらいあるから安心しておいでよー!!」

 そこへ女の子子ネコが混ざろうとして、

「アタチのもー……ぅうう゛うぅ……」

 だけど最後まで言えずに泣いちゃった。

 チルたちは5匹がかりですべての方向を見回し、おいでおいでを繰り返していたよ。茶色いマイケルも負けていられないね!

「ほら見てみんなー! これがメロンシロップ!」

 すると窓の内側の子ネコたちがしっぽを立てた。

「これがイチゴシロップで、こっちがオレンジシロップ!」

 ひょこっ。興味津々の大きな瞳。

「ブドウシロップに梨シロップ。こっちはすっぱいすっぱいレモンシロップ!」

 何匹かの子ネコは目と口をすぼめた。

「じゃあこの……あまーい香りのする、優しい色のシロップは……なーんだっ!」

 茶色いマイケルがそう質問した瞬間、バタッ!!

 そこここの子ネコ部屋の窓が、バタッ!!

 一斉に全部開いたんだ! これにはチルたちや太っちょ子ネコもびっくり仰天。女の子子ネコなんて「ピャッ」って言って飛び跳ねちゃった。

 開いた窓から鼻を突きだす子ネコたち。スンスンスンスン、香りを嗅ごうとする鼻息がいくつも重なって聞こえたよ。

 茶色いマイケルはぺろりと口元をなめた。

「このシロップはね……」

 右手に持ったシロップを、みーんなに見えるようにゆーっくり見せて回る。その動きに合わせるように、子ネコたちは窓から体を突き出した。もう体半分出ちゃってる子までいる。

 さぁ、全員見たかなぁ? ってタイミングで、茶色いマイケルが何をしたか、わかるかい?

「これを食べられるのは、今だけだっ! 今来なけりゃ全部、ボク一匹で食べてやるっ!」

 そう言ってなんと、走って逃げちゃった!

 遊びの走りじゃあないよ? 本気のネコダッシュさ。

 雪の地面に噛みつくように、低く低くとったその姿勢。服の上からでもわかるくらい、しなやかに筋肉を動かして茶色いマイケルは駆けだした。

 するとどうだい。

 窓から身を乗り出していた子ネコたちが ピョーン!

 ロケットみたいに飛び出した! 危ないね。でも大丈夫、だって猫だから!

 空中で身をひるがえして くるりんぱっ。きれいに着地したかと思ったら、その場で地面を後ろに蹴って走り出した。血相変えて走ってく。

 一息遅れて、

「「「ま、待ってよ! 茶色いマイケルお兄ちゃん!」」」

 茶色いマイケルの連れてきた子ネコたちが順に、慌てて後を追いかけはじめた。

 よし、みんなついてきたな。

 一匹と、数十匹と、数百匹の子ネコたちで 迷路街をかけっこだ!

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