スノウ・ハットの銀世界と茶色いマイケル⑪

スノウ・ハットの銀世界と茶色のマイケル スノウ・ハットの銀世界と茶色いマイケル

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 『氷の大噴水広場』にある 一番大きな縄張りに着くと、そこではお腹をパンパンに膨らませた子ネコたちが ひと休みしていた。

 兄弟ネコは折り重なるように倒れ、女の子ネコだって空を仰いでお腹を抱えている。

 その中にチルたち5匹の姿もあった。

「おーいチルたち! お腹いっぱい食べたかい?」

「茶色いマイケルお兄ちゃん! うぷ。ボクたちお腹いっぱいになっちゃった。もっとたくさん食べたいのにどうしよ」

 答えたのは細い目をした二番目のチルだ。ゴロンと転がって茶色いマイケルに足を挙げて応えた。こんな格好、チルたちのお母さんネコには見せられないや。

「そうか、だったら丁度いい。少しボクと遊んでお腹を減らそうじゃないか!」

「「「「え!?」」」」

 ”遊び”と聞いた5匹は一斉に耳を立てた。5番目の眠そうな目のチルだけは声を出さなかったけど、しっぽのフリフリ具合は一番大きい。

 5匹は順に体を起こして質問をする。

「遊ぶって言ったって、シロップ祭りの途中だよ? いいのかなぁ」

「遊んでる間に雪が食べられちゃってたらイヤだなぁ」

「そうだよ、他の縄張りには他の子ネコたちがいっぱい集まってるってシロップおじちゃんたちも話してたよ?」

 三番目のチルが眼鏡をクイッと上げて他の縄張りの状況を教えてくれた。

「心配ないさ! ボクにはね チル。ボクしか知らない とっておきの場所があるのさ。そこにはこの広場よりももっと広いところに、食べられる雪がこれでもかってくらい積もってるんだから! さっきお腹が膨れるくらいに食べたけど、ちっとも雪が減らなくて困っちゃうくらいさ」

「そんなところがっ!」

 5番目のチルが 驚きのあまり、ぴょーん と真上に飛び上がった。すごいジャンプ力だったから、雪の上に降りると足がズボッと埋まっちゃったよ。

 だけど他のチルたちも似たような驚きを感じていたみたい。みんな立ち上がって「早く続きを聞かせて!」って顔をしてる。茶色いマイケルはペロリと口の周りをなめた。

「どうだい? みんなボクの――」

「「「「「遊ぶ! 遊ぶよ茶色いマイケルお兄ちゃん!」」」」」

 今度は5匹の声がきれいに揃ったよ。まるで巨大な一匹のネコが叫んだみたいだった。そんな声を出したら周りの子ネコたちにも聞こえちゃう。……といっても実は他の子ネコたち、茶色いマイケルたちの話しをこっそり聞いてたんだけどね。ネコはね、好奇心のかたまりなんだよ?

「え? 遊ぶの? いいなぁボクも遊びたい」

「ワタチね、さっき来たばかりだからあんまり食べてないの。ワタチも食べられる?」

「やった! じゃあここの雪はゆっくり食べられるな……でもどこで遊ぶか教えてほしいなぁ」

 広場の縄張りにいた子ネコたちは茶色いマイケルたちを遠巻きに見ながら、自分のしたいことを口にした。それはほとんど呟きに近かったんだけど、耳の良いネコにとっては話し声も同然なのさ。

「いいね、みんなおいでよ! ほんのちょっとしか手を付けてない、真っ白で、さらっさらで、ふわっふわの、おいしーぃい雪が、シロップをかけられるのを待ってるんだ!」

 威勢のいい声が広場に響き渡る。話を聞いた子ネコたちは、口のすき間からこぼれてしまいそうなヨダレを慌ててすすったよ。

「行く! ボク行く!」

 飛びつくような1匹目の声をきっかけに、瞬く間にみんなみんなが近寄ってくる。ぎゅう、って空気が押し寄せてきて、その辺りだけが温かくなった。

「よかった。じゃあ今から連れていくね。でもその前に一つお願いがあるんだ。どうかな、聞いてくれる?」

 だけど茶色いマイケルの問いかけに、まともに答える子ネコたちはいなかった。

 頭の中は新しい雪のことでいっぱいだったんだ!

「聞くよ! 聞くきく! 聞くから急いでいこう! 遊ぼうよ!」

 自分の言ったことなんだけど、茶色いマイケルは「大丈夫かなぁ」と困ったような顔で笑った。

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