創作物の熟成室

メロウ・ハートの廃都市と果実のマイケル

3-2:バイクネコ

***  スノウ・ハットを夜に旅立った2匹が、気力を充実させていたのは三日目の夜までだった。  意気込みが疲れに変わってくると、頭が現実に引き戻される。  着替えや食料、飲料水。野宿の覚悟はしてきたけれど、次の街への方向や距離までが分からな...
メロウ・ハートの廃都市と果実のマイケル

3-1:荒野の2匹

***  乾いた風に、毛がなびかない。  毛づくろいしようにも、唾液が出ない。  お気に入りの真っ白だったパーカーは薄汚れて、それを着る茶色いマイケルもげっそりやせ細っていた。 「ね、ねぇ。あとどれくらいで次の街につくのかな?」  生木をひ...
ホロウ・フクロウの大森林と灼熱のマイケル

2-21:決意

***  どこから話そうか。  ホロウ・フクロウが出てきたところから?  迷子の子ネコを見つけた話かな?  茶色いマイケルは今日の出来事を思い浮かべながら家路を急いでいた。  氷の神殿で聞いた、ご先祖ネコ様たちの話をしてみたらどうだろう? ...
ホロウ・フクロウの大森林と灼熱のマイケル

2-20:夕暮れ時、別れ

***  夕暮れ時。色づく大噴水。遠く伸びる鐘の音。迷子の子ネコセンターから離れていく親子ネコの影。  氷の大噴水広場には、名残惜しい景色がたくさんあった。  今年の雪の少なさに、誰もががっかりしていると思っていたけれど、そんなことないんだ...
ホロウ・フクロウの大森林と灼熱のマイケル

2-19:冒険の誘い

***  茶色いマイケルと灼熱のマイケルは、お互いの服や毛についた泥を払いあった。乾燥した土がぽろぽろと落ちていくのは見ていて気持ちがいい。  なんだかこういうのって、初めてだな。  最近は他の子ネコたちと遊ぶにしても、お兄さんネコとして振...
ホロウ・フクロウの大森林と灼熱のマイケル

2-18:名前

*** 「ワシの……負けだ」  切れぎれの声は、さっきまでと違って芯のない、高いだけの声だった。  2匹はしばらくのあいだ、ぜぇぜぇと息を荒く、仰向けで寝転がっていた。冬枯れした木々は細く、うす空に走ったひび割れみたいで、ボロボロの自分たち...
ホロウ・フクロウの大森林と灼熱のマイケル

2-17:カウンターネコパンチ

***  鋭い爪が目の前をかすめる。  風が生まれ、吸い込まれそうになるのを堪えて後ろに跳んだけれど、燃える炎の子ネコはすぐさま追いついてくる。さらに加速したストレートネコパンチは、茶色いマイケルをわずかにそれて樹の腹をえぐった。クマでもこ...
ホロウ・フクロウの大森林と灼熱のマイケル

2-16:醜悪と狂気

*** 「ワシと話し、ワシの闘う姿を見て、知識も知恵も実現力もない自分を、思い知ったのだろう?」  子ネコはゆっくりと近づいて来た。  一歩進むたびに右に左に揺れる身体。凛と背筋を伸ばして歩いていたさっきまでとは、また別の種類の洗練された動...
ホロウ・フクロウの大森林と灼熱のマイケル

2-15:相対する爪

***  茶色いマイケルは走り出していた。  頭の中はグチャグチャなままさ。ただチルたちの顔が頭に浮かんだんだ。  子ネコらしく明るくて、ちょろちょろしてて、そっくりの顔で同じような動きをする5つ子ネコ。いつも「茶色いマイケルお兄ちゃん」と...
ホロウ・フクロウの大森林と灼熱のマイケル

2-14:豹変

***  スンスン、スンスン。  おもむろに匂いを嗅ぎだした燃える炎の子ネコ。顔の向きを変え、角度を変え、臭いの濃い場所を探っているみたいだ。 「ふむ、まずは此奴だな」  つぶやきというには堂々とした声は、もはや宣言と言っていい。 「ではな...