第3章 メロウ・ハートの廃都市と果実のマイケル

メロウ・ハートの廃都市と果実のマイケル

3-11:『長靴を売ったネコ屋』

***  メロウ・ハートの入口から円形野外劇場へとつづく、荒廃した大通り。  その道を歩いていると、左側、崩れた家々の向こうにも通りがあることに気づくんだ。瓦礫の散乱する小道に入っていくと交差点に行きつく。その角にお店はあったよ。  お店の...
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3-10:子ネコの事情

*** 「ん、うまいな。鶏肉しか用意しておらんかったが、こんな実どこから持ってきたんだ?」  それはシチューの中身。小麦粉と牛乳は分けてもらったけど、クリーム色のシチューの上にぷかぷか浮かんでいるこの、丸くて柔らかな実には覚えがない。熟れた...
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3-9:果実のマイケルと小さじ

***  トタトタトントン、トタトタトン  まな板の上で踊る包丁。石作りのかまどに火がおきて、パチパチと音を立てる。  いよいよ星も出そろったという時間、茶色いマイケルたちは借りた小屋に戻ってきた。  灼熱のマイケルは到着するなり「血抜きし...
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3-8:匂いをたどって

***  大柄な子ネコが近づいて、顔がずいと寄れば視界が埋まってしまう。  そこへ割って入る高い声。 「お前、ワシらにケンカを売るつもりか? いいだろう買ってや」 「待って待って灼熱、はやいはやいって! ねぇ、何のニオイを嗅いでるのか分から...
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3-7:箱詰め子ネコ

***  隣にいた灼熱のマイケルが、荷物の無事を確認し終えた時だった。  ぉー…… ぉー…… 「「ん?」」  消えかけのヤマビコみたいな音が、よく響く廊下をゆらゆらと漂ってきたんだ。なんだろう、誰かが呼んでる? なんて考えているうちに灼熱の...
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3-6:置き引きネコを追え!

*** 「ま、まてっ!」  子ネコは観客席を登りきっていた。ボロ服がひらりと揺れて2匹のマイケルを盗み見る。 「下だ、下に降りてった!」 「わかっとる! ワシは上から見張るから茶色はヤツを追え! 地下に逃げるかもしれん」  ぴょんと階段を飛...
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3-5:円形野外劇場

***  バイクネコから街の名前を聞いたとき、2匹のマイケルは耳を疑った。  だって芸術都市メロウ・ハートって言えばさ、華やかに着飾った役者ネコさんたちが、輝かしく歌って踊ってるイメージなんだから。録画映像の中、距離も時間も越えて胸にひびく...
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3-4:廃都市にて

*** 「いたいっ、いたいよ!」  声をあげる茶色いマイケル。  灼熱のマイケルは何も言わず、左手で首を押さえつけたまま右手を振り上げた。握っているのは刃渡り20センチほどの鉈。鈍く光を返している。 「や、やめてったら、ねぇ!」  だけどヒ...
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3-3:交渉

***  「のう、お前さんたち」  朗らかな声で灼熱のマイケルが話しかけると、100匹近くいるバイクネコたちが振り返った。  ところどころに三毛ネコや黒ネコがいるものの、大抵はサビネコみたい。  黒地にオレンジ、あるいはオレンジに黒。絵の具...
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3-2:バイクネコ

***  スノウ・ハットを夜に旅立った2匹が、気力を充実させていたのは三日目の夜までだった。  意気込みが疲れに変わってくると、頭が現実に引き戻される。  着替えや食料、飲料水。野宿の覚悟はしてきたけれど、次の街への方向や距離までが分からな...