第3章 メロウ・ハートの廃都市と果実のマイケル

メロウ・ハートの廃都市と果実のマイケル

3ー31:『空と大地のつなぎ目の部屋』

***  茶色いマイケルたちは、朝早くから『長靴を売ったネコ屋』に集められていた。  店中の窓という窓が締め切られ、暗がりの中、その部屋の扉だけがぼうっと光っている。 『空と大地のつなぎ目の部屋』  そう、いよいよこの部屋を通って大空の国へ...
メロウ・ハートの廃都市と果実のマイケル

3-30:メロウ・ハート

***  リーディアの実の入ったシチュー鍋は、次々と交換されていった。  全てのネコが何杯かのおかわりを終えた頃、赤サビさんとカラバさんと、それからピッケが舞台の真ん中に立ったんだ。しばらく何も言わずに立っているばかりだったから、みんな段々...
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3-29:ネコチョップ

***  まず先にお皿が配られた。  形も大きさもバラバラで、それでもメロウ・ハートのネコたちは、大事そうに両手で抱えて列に並んでいるよ。 「はぁい、おかわりはたっぷりあるからねぇ」  果実のマイケルは、わざとじゃないかっていうくらい、お玉...
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3-28:鼻歌

*** 「この植物は、木の実の国から伝えられました」  街のネコたちの注目がリーディアの花に集まる中、ピッケが語っていく。 「その根っこは瓦礫がれきや錆鉄さびてつ、汚れた水などを分解して、空や大地に戻すことができます。葉っぱは空気中の水分を...
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3-27:花

***  時間が流れるのはとっても早い。  忙しければ忙しいほど、あっという間に過ぎちゃうんだ。茶色いマイケルがメロウ・ハートに来てからもう3週間がたっていた。つまりスノウ・ハットを出て約1か月。知らないうちに時間を切り取られてるんじゃない...
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3-26:手掛かり

***  カラバさんの目つきが変わった。  まん丸い黒目が茶色いマイケルを秤はかりにかける。 「それってどぉいう……ぐむぅ」  ぽろっと零れた果実のマイケルの声を、灼熱のマイケルが肉球で押しとどめた。 「茶色いマイケルさん。あなたの言う通り...
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3-25:納得

*** 「いや、ワシも話の運び方を間違えた」  珍しく灼熱のマイケルが果実のマイケルの言葉にも素直になっていた。 「やはり願いが大きすぎたか。ピッケにもう僅かばかりでも余裕があれば……いや、あの年齢の子ネコにそれを求めるのは無理がある」  ...
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3-24:腐植土

***  その昔、さまざまな実験が行われたってカラバさんは教えてくれたよ。『空と大地のつなぎ目の部屋』の”奇跡”を解明して、ネコたちの”技術”にするための実験をね。  わざわざ理由を作って空と大地とを行き来する。子ネコの前ではとても言えない...
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3-23:願いの代償

***  空に雲がかかったらしく、部屋の中が暗くなる。もう夜も遅くて本当ならみんな眠ってる時間なんだ。  カラバさんは手元の調光つまみをしぼって、部屋の明かりを少しだけ強くした。どのネコも目を細めずに済むくらいゆっくりとね。  それから灼熱...
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3-22:線

*** 「お母さんネコはどうして死んだの?」  答えるネコはいなかった。ピッケは下を向いたまま、 「お母さんネコはまたここに来たかったんじゃないの? お父さんネコが壊さなきゃ、お母さんネコはまたここに戻って来られたんじゃないの?」  と重く...