最終章 ティベール・インゴットとあわあわの世界。そして4匹のマイケル

あわあわの世界

(118)9-11:闇に向けてかかる虹

***  冷たい雷樹は、その樹冠を空いっぱいに広げきると同時に、鋭い音をたてて砕けてしまった。  氷片がキラキラと散っていく。  空には暗い亀裂だけが残った。奥行きの見えない不気味な裂け目はすぐさまボロボロと崩れて拡がって大きな穴になってし...
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(117)9-10:風と大空

*** 『どうにかならんのか』  黒猫は鼻息を荒くして、狂った振り子みたいにしっぽを揺らしながら、どこへともなく問いかけた。その足元にある機械球からだろうか、 『分解が間に合ってないねぇ』  拡声器ごしの声はキャティのものだ。 『出力が問題...
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(116)9-9:神の芯

***  雷雲ネコさまの見たものは『白い群』。  ジャガー、ピューマ、コドコド、子ユキヒョウ、そして猫。  かたわらには雲派閥の神ネコさまたちもいて、巨大クレーター中央の丘には知った顔ばかりが集まっている。まわりを囲む100万匹の細神たちも...
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(115)9-8:共謀

***  オセロットと切り離された子ネコたちは、重力に従い落ちていく。  その最中、茶色いマイケルは眩い“光”に向かって強く頷いた。“光”は雷鎖に引かれ、大口を構えている巨大なライオンの元へと流れていった。 『なんだあれ、どうなった?』 『...
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(114)9-7:雷雲VS小雨 後編

***  『権能貸与』と『芯の共鳴』。  今、子ネコたちの使っている力は、大きく分けてこの2つだ。  樹洞の中でオセロットはこう言った。  ――俺の力は弱い。雷雲にはとうてい及ばないし、その一部しか貸し出せないとなればなおさらだ。だがな、弱...
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(113)9-6:雷雲VS小雨 後編

***  重苦しい鈍色の空に、黒雲が広がっていく。  空気が細かに振動し、星のどよめく声が一帯に長く留まった。  閃光が走った。  鋭く大気の裂ける音がして、轟(とどろき)がそのすぐ後を追う。膨れあがった光はすべてを飲み込み、影が地を這った...
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(112)9-5:古戦場

***  雷雲ネコさまの怒りは目に見えた。  紫電のたてがみが外に向かってほとばしり、器の中の黒雲は、のたうち回る雷蛇を揉み込むようにうねっている。  すぐそばにいた神ネコさまたちは後ろに飛び下がり、岩の中央にはライオンだけが残った。焼けた...
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(111)9-4:指名

***  神ネコさまたちのどよめきは、岩の下にいる茶色いマイケルたちにも憚ることなく伝わってきた。 『神世界鏡を、アイツらが?』 『地核の神もモウロクしたか』 『だからと言って地核さまがネコに後れをとるなど……』 『しかし鏡の存在を知ること...
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(110)9-3:話を聞いて。

***  大空ネコさまの右隣に、重々しい足取りでライオンが歩み寄る。  ゆさっ、ゆさっ、と紫電のたてがみを揺らし、無感情に眼下を見回した。 『話にあったネコたちですか』  礫ネコさまと、それをとり囲む子ネコたちと神々と。  雷雲ネコさまの視...
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(109)9-2:岩の上の神さまたち

***  立ち塞がるように並んだ3つの巨岩。  その左上、音もなく現れたジャガランディは茶色いマイケルたちを見下ろした。  素早く見渡す様は、森で会った時よりもキリッとしていて、短くもすっと伸びた4本の足が揺るぎない。何度か遠くへ目をやって...