最終章 ティベール・インゴットとあわあわの世界。そして4匹のマイケル

あわあわの世界

(8)2-1:凍った噴水のある広場

***  茶色いマイケルは背伸びをした。  それからアゴを上げ、お祭り当日なみにごった返しているこの広場を、ネコたちの頭越しに眺めたよ。  目に飛び込んできたのは巨大な噴水だ。  空に挑みかかるように噴き出した水柱が、中央に一本とその周りに...
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(7)1-7:重い命

*** 「あの実はたくさんの命を吸ってるんだ」  果実のマイケルは目をつむり、 「その命を豊かさに変えて今も繋いでる。茶色、オイラがどうしてこの話をしたか、分かるぅ?」  まぶたを持ち上げ、子ネコを真正面から見据えた。 「あの村での出来事は...
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(6)1-6:外道ネコ

*** 「『壊死猫病』の原因として医者ネコが目をつけたのはぁ、あるマタタビの変種だったんだ。  その”変種”は、味も香りもいいけど、数が少なくてすぐ腐るから取引材料にはならなかったって話。だから数を増やそうと数年前からネコの手で栽培しはじめ...
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(5)1-5:黒いしみ

*** 「はじめ、『壊死猫病』と診断されて入院していたネコは3匹だったんだぁ。  どういう経緯で感染したのかは分かってなかった。3匹ともここ数年は村の外に出ていないって言ってたからねぇ。  医者ネコは、3匹の患者ネコたちを診療所に隔離して、...
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(4)1-4:壊死猫病

*** 「オイラの故郷である木の実の国『ハーヴェスト・クリーク』は、種子を扱うことで周りの国とうまく付き合っているんだ。  扱うっていうのは何も取引だけじゃなくって、土地土地に合わせた品種改良や開墾の提案、耕地開発の支援なんかも含まれてる。...
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(3)1-3:見捨てたネコ

*** 「は? 何を言うておるんだお前は。ここまで来て行きたくないだと? 世界のあれこれがワシらの働きにかかっておると言われたばかりではないか。お前の用事は確かに空で終わるものだったのだろうが、大地の神が滅びた今、どんなに優れた『リーディア...
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(2)1-2:行動の意味

*** 「え、世界が終わったって、どういう……」  茶色いマイケルは、”終わった”という言葉を聞いて頭が真っ白になっちゃった。なんでだろう、身体が小刻みに震えて強張るんだ。『ティベール・インゴット』を掲げたままの姿で、動けなくなってしまった...
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(1)1-1:あわあわの世界への入り口

スノウ・ハットに住む子ネコたちなら誰だって知っている絵本がある。  『くらぁい くらぁい おおきな もり』。  その本に出てくるのが、森を覆いつくすほどの怪鳥、ホロウ・フクロウだ。  それは子ネコにとって恐怖の象徴みたいな存在で、名前を聞い...